石油タンク底板の防蝕と漏洩対策:FRPライニングの利点と実践

RSテック

イントロダクション

石油タンクはエネルギー供給の重要なインフラであり、その安全性は絶えず重視されています。特に底板の腐蝕と漏洩は、環境汚染や事故に直結するため、防蝕と漏洩予防は石油タンクの維持管理において最優先事項です。本資料では、石油タンクの底板における腐蝕のメカニズム、それに対する現代の防蝕技術、特に内面防蝕ライニングと漏洩予防について解説します。

FRP(Fiber Reinforced Plastic)ライニングによる内面防蝕対策は、その効果が実証されている技術の一つです。FRPライニングは、底板を腐蝕から保護するだけでなく、万が一外側から腐蝕貫通孔が開いても漏洩を防ぐことが可能です。

石油タンクの底板腐蝕のメカニズム

石油タンクの底板腐蝕は、主に孔蝕により生じ、その結果として漏洩事故に繋がることがあります。孔蝕は、底板の内外面において外周部に集中して発生し、これは水や酸素といった腐蝕を促進する要素が溜まりやすいためです。

底板内外面の腐食メカニズム

  • 内面:
    • 石油は常温常圧では液体ですが、揮発性のある成分も含まれています。これらの成分が蒸発し、タンク内上部に溜まった後、温度変化によって結露します。この結露水が底板に滴り落ち、腐食の原因となります。
    • 石油の中には硫黄分が含まれている場合があり、これが酸性物質を生成し、腐食を促進します。
    • 微生物の活動も腐食の原因となります。微生物は石油中の有機物を分解し、酸性物質を生成します。
  • 外面:
    • 地下水や雨水などが底板に浸透し、腐食の原因となります。
    • 土壌中の塩分や酸性物質も腐食を促進します。
    • タンク底板と基礎との間に隙間があると、そこに水が溜まりやすくなり、腐食が進行します。

外周部への腐食集中

  • タンク底板は、中央部よりも外周部の方が薄く作られているため、腐食の影響を受けやすいです。
  • 外周部は、タンクの荷重を支えるために溶接部が多く存在します。溶接部は母材よりも腐食しやすい箇所です。
  • 外周部は、タンクの呼吸作用によって生じる空気の流れの影響を受けやすく、水分や酸素が溜まりやすくなります。
  • 底板外面の腐蝕は、タンクの張り出し部から拡散浸透してきた酸素と水によって生じます。外周部ほど酸素量が多いため、ここにも腐蝕は集中し、錆瘤腐蝕の形態をとります。
  • 底板の外周部が特に腐蝕しやすいもう一つの理由は、この部分に使用される高張力鋼と普通鋼の間に電位差が生じることです。この電位差により、高張力鋼側が陽極になり、腐蝕が加速します。この現象は孔蝕だけでなく、溶接線に沿った溝蝕の発生にも繋がります。

3. 孔食

  • 上記のようなメカニズムによって、底板表面に小さな穴が開きます。これが孔食と呼ばれるものです。通常、この腐蝕の形態は錆瘤腐蝕と呼ばれ、断面が逆富士山型をしており、深さ方向に鋭角的に進行し、最終的には貫通孔が生じる特徴があります。
  • 孔食は、表面積が小さいため、腐食速度が速くなります。
  • 孔食が進行すると、底板に穴が開き、石油漏れが発生する可能性があります。

腐蝕したときの修理法

過去には孔蝕をビード溶接で埋める方法や、鋼板の当て板を溶接する方法が推奨されていましたが、これらの方法は溶接部近傍の腐蝕を助長するため、現在では好ましくない方法とされています。修理は法令に違反しない適切な方法で行うべきであり、適切な防蝕策を考える必要があります。

このように、石油タンクの底板腐蝕は複雑なメカニズムによって進行し、適切な対策が求められます。次章では、底板内面の防蝕対策、特にFRPライニングによる内面防蝕について詳しく解説します。

底板内面の防蝕対策

石油タンクの底板腐蝕に対する効果的な防蝕対策は、タンクの長期的な安全性と経済性を保証するために重要です。内面腐蝕に対しての樹脂は、耐油エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂などが耐性があり有効です。

しかし内面防蝕加え漏洩対策となればFRPライニング工法をしておく必要があります。

FRPライニングとは

FRPライニングは、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic)の略で、ガラス繊維などの強化繊維を樹脂で固めた複合材料を使用したライニング工法です。これは、腐食や漏れに対する保護層を提供するために、既存のタンクや配管などに適用されます。

FRPライニングの主な目的は、内部からの腐食に対してタンクを保護することです。これは、特に地下の石油貯蔵タンクや化学薬品を扱うプラントでの使用が一般的です。FRPライニングは、強度と耐薬品性が要求される環境で特に有効であり、既存の構造物の耐用年数を延ばすためにも使用されます。

施工プロセスは、対象となる内部表面にFRPを積層していきます。これにより、耐水性、耐久性が増し、腐食や化学反応から保護するバリアを形成します。FRPはカスタマイズが可能であり、多くの場合、特定の用途に合わせて異なる種類の樹脂や繊維が選ばれます。

内面防蝕及び漏洩対策としてのFRPライニング

FRPライニングによる内面防蝕対策は、現状の“公的”防蝕法では、タンク底板外面の孔蝕を完全には防げず、その腐蝕状態を調べる手段も限られています。しかし、内面にFRPをライニングすることで、外側からの腐蝕貫通孔が開いても漏油を防げるという大きな利点があります。

FRPライニングは、鋼材の容器に直接貫通孔が開いた場合でも、FRP層が液体の圧力を支えることで漏油を防ぐことができます。実験では、鋼材の容器に10φの孔を開けて、その上に厚さ1mmのFRPを貼って塞げば、20mHの水圧を支える事が出来ることができることが示されています。これは、実際の石油タンクの底板腐蝕貫通孔の直径が5φを超えることがほとんどないため、厚さ1mm程度のFRPライニングで漏油を実用上十分に防げることを意味します。

ただし、FRPライニングを漏油防止策として消防申請することは現在のところ認められていません。日本では、タンク底板の防蝕法としてのみ認知されており、漏洩防止法としての利用は公式には認められていない状態です。このため、工事申請は「底板防蝕」を目的として行う必要があります。

まとめ

石油タンクの底板腐蝕と漏洩予防には、内面にFRPライニングを施すことが非常に効果的です。FRPライニングは、腐蝕から底板を保護し、外側からの貫通孔が開いても漏油を防ぐことができるため、タンクの安全性と耐久性を大幅に向上させることができます。しかし、FRPライニングの施工と維持には特別な注意が必要であり、漏油防止策としての公式な認定はまだ得られていないため、申請や施工にあたっては適切な指導と協議が求められます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました