はじめに
腐食や劣化に対する適切なメンテナンスは、設備の管理・維持にとって不可欠なものとなります。
腐食や劣化は、金属やコンクリートなどの構造物の耐久性を損なうため、設備の維持管理に重大な影響を与えます。
ここでは、腐食や劣化の影響とその改善・対策についてまとめます。
腐食や劣化は、想定の範囲内であれば、計画的な修繕をすることで想定内のコストで防食対策ができます。しかしながら想定しているより速い速度で進行する腐食や劣化は、放置しておくと、さらに腐食の進行が加速され、金属には穴が開き、コンクリートは強度が低下し破損してしまう可能性もあり、大規模な修繕が必要になってしまいます。
想定しているより早い腐食は、局部的に進行している可能性があります。このような場合、早期に対応する必要があります。
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金属が腐蝕する原因
金属が錆びる原因は、化学反応によるものです。主に鉄や鋼などの金属が空気中の酸素や水分と反応し、酸化することで起こります。
金属表面に存在する酸化物や水分が、酸素と反応して酸化を起こし、金属表面に酸化物の層が形成されます。
この層は、一見すると金属表面を保護しているように見えますが、実際には金属の内部で酸化反応が進行し、金属の強度を低下させています。
金属が錆びる原因には、酸素や水分の他に、塩分などの化学物質が関与している場合もあります。例えば、海水や道路の除雪剤などの塩分が金属に付着すると、金属表面に電気化学的な反応が起こり、錆びを加速させます。
金属が錆びるプロセスは、時間の経過とともに進行し、錆びが進むと金属表面の光沢が失われ、金属自体の強度も低下します。このため、金属製品の耐久性を高めるためには、金属表面の保護が必要になります。
金属が局部的に腐食進行する構造
局部的な錆の進行には、金属表面に陽極と陰極が存在し、これらが電気化学的な反応を起こすことで、電池構造が形成されることが関係しています。
一般に、金属表面には微小な不均一部分が存在し、これらの部分には微小な電位差が生じています。この電位差が大きくなると、部分的に陽極と陰極が形成されます。陽極は、電気的に酸化反応が進み、陰極は還元反応が進みます。
例えば、鉄製品に表面に傷がついている場合、傷の部分が陽極となり、周辺の金属が陰極となります。この状態で、水や塩分などの電解質が存在すると、電解質中のイオンが陽極に移動し、酸化反応が起こります。この反応によって、金属イオンが溶け出し、周辺の金属に還元反応が起こり、金属表面に錆が発生します。
局部的な陽極と陰極の形成によって、金属表面に電池構造が形成されることで、錆の進行が加速されます。
このため、局部的に進行する腐食対策は、表面の傷や汚れをできるだけ取り除き、防錆処理をすることが重要です。
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また、異種金属腐蝕も電池構造の形成による腐食加速現象です。
異なる金属には異なる電極電位があります。この電位差が大きいほど、腐食のリスクも高くなります。電位が高い金属が陽極、電位が低い金属が陰極として振る舞います。
陽極側の錆は、周辺の金属と比較してより進行しやすい傾向があります。これは、陽極側の金属が酸化反応を起こしているため、電子が不足しているためです。そのため、周辺の金属が陽極側の金属に電子を供給することで、錆の進行を加速させます。
コンクリートの劣化原因
コンクリートの腐食や劣化は、さまざまな原因によって引き起こされます。
1:アルカリ骨材反応
コンクリート中の鉄筋が錆びることがあります。この場合、酸化反応によって鉄が鉄イオンになり、周囲のコンクリート中のアルカリ成分と反応して酸性の化合物が生成されます。
この酸性化現象によって、コンクリート中のカルシウム化合物が分解され、コンクリートの硬度が低下することがあります。この現象は「アルカリ骨材反応」と呼ばれます。
2:塩分による劣化
コンクリートの劣化には、塩分による影響もあります。塩分が含まれた水がコンクリートに浸透すると、塩分が析出し、結晶化現象が起こります。この結晶化現象によって、コンクリート中の水分が蒸発し、コンクリートが乾燥し、硬度が低下することがあります。また、塩分によって鉄筋が腐食し、コンクリートの劣化が進行します。
3:硫化水素による腐食
硫化水素によるコンクリートの腐食もあります。硫化水素は、工場排水や下水などから発生する有害ガスであり、環境中に放出されると、コンクリート構造物に悪影響を及ぼすことがあります。
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硫化水素は、空気中の酸素と反応して硫酸を生成し、この硫酸がコンクリートの劣化を引き起こす原因になります。
硫化水素はコンクリートの腐食に対して非常に強力な影響を与えるため、硫化水素の発生源や、硫化水素に対するコンクリートの防食などが考慮される必要があります。
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4:凍害
コンクリートは凍害という現象によって劣化することがあります。
凍害とは、コンクリート中の水が凍結して膨張し、それが解けた際に収縮することによって、コンクリートの内部に圧力をかけ、ヒビや割れを引き起こす現象です。
特に、寒冷地域では、冬期にコンクリート中の水分が凍結・融解を繰り返すことによって、凍害が発生することが多くあります。凍害が発生すると、コンクリートの強度が低下し、表面にはクラックが発生します。また、凍害によってコンクリートの表面が剥がれ落ちたり、構造物の耐久性に大きな影響を与えることがあります。
5:有機酸による腐食
コンクリートの腐食には、有機酸による腐食も含まれます。例えば、酢酸やクエン酸などの有機酸がコンクリートに浸透すると、コンクリート中のカルシウム成分が溶出してしまい、コンクリートの強度が低下してしまいます。この現象を有機酸腐食と呼びます。
有機酸腐食は、主に食品加工工場や農業施設、廃棄物処理施設などで発生しやすく、酸性の廃液がコンクリートに浸透することが原因となります。
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有機酸腐食によるコンクリートの劣化を防ぐためには、コンクリートの表面に防食ライニングをするなどの対策が必要です。また、適切なメンテナンスを行い、定期的な清掃や点検を行うことで、有機酸腐食によるコンクリートの劣化を予防することができます。
有機酸に対する防食対策を行う場合には、適切な樹脂や工法の選定が重要となります。専門家に相談することをお勧めします。
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ステンレスの腐食
ステンレスの錆びにくい理由と、錆びてしまう理由については以下の通りです。
ステンレスが錆びにくい理由
ステンレスは、クロムなどの合金元素を含む金属であり、表面に薄い酸化皮膜が形成されることで、耐食性が高くなっています。
この酸化皮膜は、外部の酸化剤や水分、塩分などの影響を受けても安定しているため、錆びにくいと言われています。
ステンレスの種類によっては、ニッケルやモリブデンなどの合金元素を含むことで、耐食性が更に向上します。
ステンレスが錆びる原因
一般的なSUS304ステンレスが腐食する原因は以下のようなものが代表的です。
防食による改善
防食塗装や防食ライニングは腐食を防ぐための方法であり、腐食や劣化を改善することができます。防食塗装は、金属表面に塗布することで、腐食の原因となる水分や酸素などの接触を遮断し、腐食の進行を防止します。
防食ライニングは、コンクリートや金属の内部に、化学薬品に対して耐性がある分厚い膜を形成することで、腐食や劣化がおこる環境を遮断します。
これらの方法は、構造物の耐用年数を飛躍的に延ばすことができますが、塗装とライニングの違いを理解し、用途、環境条件によって、適切な工法や樹脂を選定する必要があります。
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まとめ
想定外の速度で進行する腐食や劣化は設備の安全に大きな影響を与えます。原因を早期に特定し、適切な防腐措置を施すことが重要です。その際、用途に応じて塗装かライニングかを選択し、設備の劣化状況に応じて修繕方法を検討する必要があります。
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